ウッドデッキの手入れと、傷み方

ウッドデッキの手入れの話は、たいてい「塗り替え」から始まります。ただ、実際に先に傷むのは、塗装した面よりも塗れていない面、乾かない面のほうです。この記事では、どこが、なぜ傷むのかを整理し、そのうえで自分でできる手入れと、構造に関わるので見てもらったほうがよいものを分けます。

この記事は施工の手順書ではありません 塗料の塗り方やビスの打ち方といった作業手順は扱いません。扱うのは「どこを見るか」「何が起きているのか」「どこから先は自分で判断しないほうがよいか」という判断材料です。

原則:傷むのは「濡れて乾かないところ」から

木が腐るのは、水に濡れたからではありません。濡れたあと、乾かない状態が続くからです。雨が降っても、日が当たって風が抜けて数時間で乾く面は、長く保ちます。逆に、一度水を含むと日陰で風も通らず、じわじわとしか乾かない面は、同じ材でも先に傷みます。

この原則をひとつ持っておくと、点検の見方が変わります。デッキの表面をぐるりと眺めるのではなく、水がどこに入って、どこで止まるかを追うようになります。実際、傷んだデッキを見ると、傷みは面全体に均等ではなく、水が滞留する場所に集中しています。

人工木(樹脂と木粉の複合材)の場合は腐りませんが、それでも同じ場所に汚れやカビが出ます。水が止まる場所は、材質にかかわらず「弱い場所」です。

傷みやすい箇所は、だいたい決まっている

木口(切断面)

いちばん傷みやすいのがここです。木は繊維の方向に管が通っているので、切断面はストローの束の断面のような状態になっています。表面(板目・柾目の面)に比べて、木口は水を吸い込む速度が桁違いに速く、そして吸い込んだ水は奥に入るので抜けにくい。

やっかいなのは、木口が目に入りにくい場所にあることです。床板の端、根太の切り口、手すりの柱の上端。特に柱の上端が水平のまま露出していると、そこに雨水が溜まります。上を向いた木口は、水を集める形になっています。

デッキを自分で作った、あるいは後から板を継ぎ足した場合、現場でカットした切断面は塗装が乗っていないことがあります。既製の材は工場で処理されていても、切った瞬間に無処理の木口が生まれます。ここが後から効いてきます。

床板どうしの隙間

床板のあいだの隙間は、水を下に落とすためにあります。ここが落ち葉・砂・苔で詰まると、水が抜けずに板の側面と隙間の中に留まります。詰まったまま濡れると、そこだけ乾かない環境が長時間できあがることになります。

落葉樹が近くにある家では、これが季節ごとに起こります。上から見ると隙間は掃除されているように見えても、細い棒を差し込むと途中で詰まっていることがあります。デッキの手入れとして最も効果があって最も地味なのが、この隙間を空けておくことです。

地面に近い束柱(つかばしら)

デッキを支える束柱の足元は、地面からの跳ね返りの水を受け、地面からの湿気も上がってきます。しかもデッキの下は日が当たらず風も抜けにくいので、乾きが遅い。条件が全部そろっています。

ここは、上から見ているだけでは分かりません。デッキの下を覗く、あるいは横から懐中電灯を入れて見る必要があります。デッキの下に落ち葉が溜まっていたり、雑草が茂っていたりすると、風の通りがさらに悪くなります。デッキの下を空けておくのも手入れのうちです。

壁との取り合い

デッキが建物の外壁に接している部分、あるいはごく近くまで寄っている部分です。ここは雨が吹き込んでも乾きにくく、掃除の手も入りにくい。落ち葉やゴミが溜まりやすい線でもあります。

壁まわりは、デッキだけの問題ではなくなることがあります デッキが建物に接している箇所で水が滞留すると、影響が外壁側に及ぶことがあります。ここに変色・膨れ・シミなど、建物側の変化が見えている場合は、デッキの手入れとして扱わず、建物を診られる人に見てもらったほうが安全です。デッキを直しても原因が残る可能性があります。

天然木の手入れ ── 塗装が何をしているか

「塗装=見た目のため」と思っていると、塗り替えの判断がずれます。屋外の木部用塗料が担っているのは、おおむね次の3つです。

つまり塗装は、木の代わりに削られていく消耗する層です。減れば効き目が落ちます。だから塗り替えは「汚くなったから」ではなく「機能が減ったから」やるものだ、という見方になります。

塗り替えの見極め

年数で決めようとすると、外れます。同じ製品でも、南向きで一日中日が当たる面と、北側で日陰の面とでは、減り方がまったく違います。同じデッキの中でも面によって違うくらいです。年数ではなく、状態を見て判断するほうが実態に合います。

そろそろ、と考えるサイン

塗り替えは、部分的に行うと色の差が出ます。全面を同じタイミングで塗り替えるのか、消耗の早い面だけ回数を増やすのか。見た目をそろえたいか、機能を優先するかで選び方が変わります。どちらが正しいというものではありません。

なお、塗り替えの前に隙間の掃除と乾燥が要ります。濡れたまま、汚れたまま塗ると、その下に水と汚れを閉じ込めることになります。手入れの順番としては、掃除・乾燥が先で、塗装は後です。

人工木の手入れ ── 腐らないが、汚れと熱は残る

人工木は塗り替えを前提にしない材です。腐朽やシロアリの心配は基本的に考えなくてよく、そこが選ばれる理由でもあります。ただし「何もしなくてよい」ではありません。付き合う相手が変わるだけです。

汚れ

人工木は塗り替えないので、汚れは塗り直しでリセットできません。天然木なら再塗装のときに一緒に均されていたものが、そのまま蓄積します。落ち葉の色移り、砂の擦れ、日陰面の苔や黒ずみ。定期的に洗い流す手入れが、天然木より相対的に重要になります。

洗浄については、強い水圧をかけると表面のエンボス(木目状の凹凸)を傷めることがあるため、製品の説明に沿った方法を確認してください。ここは製品ごとに条件が違うので、一般論で「こうすればよい」とは書けません。

人工木は、直射日光を受けたときに天然木より表面温度が上がりやすい傾向があります。夏場の日中、素足で出られない、という状況が起こり得ます。これは手入れで解決するものではなく、使い方と日除けの側で対処する話になります。日除け、植栽、屋根やパーゴラの有無で、実際の使い勝手はかなり変わります。色が濃いほど熱を持ちやすいという傾向もあります。

表面の傷は戻らない

ここは天然木とはっきり違う点です。天然木は、表面が傷んだり傷が付いたりしても、削って塗り直せばある程度は回復します。人工木は、削って直すという手が基本的に使えません。重い物を引きずった線、鋭い物を落とした欠け、こうしたものは残ります。

だから人工木の手入れは、直すことより、傷を付けない使い方に重心があります。家具の脚に保護材を挟む、重い物を引きずらない、といった日常の側です。地味ですが、こちらのほうが効きます。

項目天然木人工木
腐朽・虫塗装で守る。木口が弱点基本的に考えなくてよい
定期の手入れ掃除+塗り替え掃除が中心。塗り替えはしない
汚れ塗り替え時にある程度リセットされる蓄積する。洗浄の比重が上がる
表面の傷削って再塗装で回復の余地がある戻らない。付けない側で対処
夏の表面温度比較的上がりにくい上がりやすい傾向。日除けで対処
下地・構造材質にかかわらず、束柱・束石・地面の問題は共通で起こる

材質そのものの違い、選び方の考え方は別記事にまとめています。

点検の観点 ── 4つ見れば、だいたい分かる

表面の色や汚れは目に入りますが、実際に重要なのは動くかどうかです。次の4つは、道具なしで確認できます。

1. ぐらつき

デッキの端や手すりに体重をかけて揺すってみます。全体がわずかに動く、あるいは特定の場所だけ動く。「前はこんなに動かなかった」という変化があるなら、それが情報です。手すりのぐらつきは、そこに寄りかかったときの安全に直結するので、優先して確認したい箇所です。

2. 床板のたわみ

床板を1枚ずつ踏んでいって、他より沈む板がないかを見ます。沈む板があれば、その板自体が傷んでいるか、下で支えている根太が傷んでいるか、根太の間隔が広い箇所か、のいずれかです。1枚だけ沈むのか、その周辺がまとまって沈むのかで、原因の位置が変わります。周辺がまとまって沈むなら、床板ではなく下の構造の話になります。

3. ビスの浮き

床板を留めているビスの頭が、表面から出てきていないか。手で撫でて引っかかるものがあれば浮いています。ビスが浮くのは、材が動いた結果です。木が乾湿で伸縮した、下の材が痩せた、留めている先が効かなくなった。素足で歩く場所なので、そのままにはしにくい箇所でもあります。

浮いたビスを締め直すだけで済むこともありますが、締め直しても効かない(空回りする)場合は、留めている先の材が傷んでいる可能性があります。これは表面の問題ではありません。

4. 束石のずれ

デッキの下を覗いて、束柱を受けている束石を見ます。柱の中心と束石の中心がずれていないか、束石が傾いていないか、束石と柱のあいだに隙間ができていないか。浮いている束柱があるのは、荷重がそこで受けられていないということです。

地面が沈むと、後から傾く

これは手入れでは直りません。項を分けて書きます。

デッキの荷重は、束柱を通って束石に伝わり、束石から地面に伝わります。最後に受けているのは地面です。その地面が、施工後に少しずつ沈むことがあります。もともとの地盤の状態、埋め戻した土の締め固め、水の流れ方。原因はいくつもあります。

沈み方が場所によって違うと、デッキは傾きます。そして傾くと、水が同じ場所に集まるようになります。水が集まる場所ができれば、そこから傷み始める。傾きは、見た目の問題であると同時に、傷み方を偏らせる原因でもあります。

ここで押さえておきたいのは、塗装や掃除でこれは止まらないということです。塗り替えの相談をしていたつもりが、実際には地面の話だった、ということが起こります。デッキの下に水が流れ込む、雨のあと水が引かない、といった状態が見えているなら、それは排水の話です。

自分でできることと、見てもらったほうがよいこと

区別の基準はシンプルです。表面と清掃は自分の領域、荷重を受けている部分は自分だけで判断しない、という線です。

自分でできる手入れ

構造に関わるので、見てもらったほうがよいもの 次のような状態は、表面の手入れの範囲を越えています。人が乗る構造物なので、判断を独力で進めないほうが安全です。

これは「業者に頼みなさい」という話ではありません。状態を正確に把握するところまでを、外の目に入れておくという話です。見てもらった結果、床板の一部交換で済むと分かるかもしれませんし、下の構造からという話になるかもしれません。どちらにしても、範囲が分かってから決めればよいことです。

複数のところに見てもらうと、範囲の切り方に違いが出ます。床板だけ替えればよいと言われるか、束の作り直しから提案されるか。その違いが出ること自体が、判断の材料になります。1か所だけだと、その見立てが自分のデッキに対して妥当なのかを比べようがありません。

作り直す・広げる場合の材料

床板の交換や、デッキを新しく作る段階の話になったら、必要な材の本数を先に出しておくと、話が具体的になります。寸法を入れれば、床板の枚数や根太の本数が出ます。

ご利用にあたって 本記事は、ウッドデッキの点検と手入れを検討する際の一般的な考え方をまとめたものであり、施工方法や補修方法を指示するものではありません。 傷みの進み方や手入れの間隔は、使用されている材、塗料、日当たり、風通し、地面の状態、地域の気候によって大きく変わるため、年数で示すことはしていません。 製品ごとの手入れ方法は該当製品の説明でご確認いただき、構造や安全に関わる部分は現物を見られる専門家にご相談ください。 本サイトは、本記事および本サイトの利用によって生じたいかなる損害についても責任を負いません。